第12回 心みがきの講演会
平成21年1月20日(水)10:30〜12:00
真和館 集会室
演題「これからの福祉」
講師:潮谷愛一 先生
現在、日本人の平均年齢は男性が76歳、女性が86歳となっている。
100歳以上は、36,000人になり、その8割6分を女性が占めている。
長生きはするが、はたして健康であるか?
体は健康であっても、頭が病気(認知症)の人が増えてきている。
(熊本市内だけでも、10,000人)
慈愛園は1923年に開設し、乳児から高齢者までの受け入れを行っている。高齢者は、以前に比べ長生きになり、高齢化が進んでいる。
近年、ぬいぐるみや人形を抱いて入所してくるお年寄りが増えてきている。
先日も「トラ」のぬいぐるみを抱いて入所してきたお年寄りがいたが、他の女性入所者も、その「トラ」を欲しがり取り合いになった。職員が間に入りなだめても、「私は寅年生まれだから、トラは全部私のもの」と聞き入れなかった。そこで、別の「トラ」を
買ってきたが捨てられてしまった。
また、あるお年寄が入所した際に、いくら名前を呼んでも返事をしなかった。しかし、結婚前の旧姓で呼ぶとすぐに返事をした。お年寄りは、我慢することや満たされないことを多く経験しており、自分の一番良い時の記憶が強く残ったり、一番辛い時の記憶だけ残ったりする。また、母親から抱っこでの愛情不足や充分に甘えられなかった人はぬいぐるみや人形で無意識に満たそうとしている。
全てを失うのが老人であり、真面目な人・しっかり者・頑張り屋さんが貯めたものは年を取ると減って行く。失うという事を気にするため、鬱になったりして老後は良くない。しかし、真面目にしっかりとやらながった人は、減るものが無い。
年を取ると、能力は落ちるように出来ているのだから、あまり真面目にしっかりやる必要はない。
歳を取る事を嫌がる人が多いが、忘れることが増える分、新しい情報を入れて知識が増えるので嬉しいことでもある。
〜どんな人がボケやすいか〜
@ <総入れ歯である> 総入れ歯であると固い物が噛めず、飲み込んでしまう。
噛む事は健康の第一の秘訣であり、噛めば噛むほど酸素と栄養を血液が脳に運んでくれる。
8020運動(80歳で20本の歯を残しましょう)20本以上ある高齢者は未満の
高齢者に比べ元気で寝たきりになる事が少ないというデーターもあり、それほど歯は
重要である。現在、日本人の80歳時点での自分の歯の平均本数は5本である。
A <今を持て余す人に多く見られる>
体を動かす事が大切で、動けば動くほど血液が循環する。
エコノミークラス症候群…飛行機などで、長時間ジッと座っていると足に血が溜まり心臓や肺、脳に血液が行かず、血液に塊ができてしい、酷い人は死に至るケースもある。現在では、予防のために3時間以上の飛行になると機内で体操を取り入れてある。
動かないと、血液の循環が悪くなり、ボケに向かう。
B <趣味が少ない人>
趣味が多い人は、外に出る機会が多く、色んな人と会い、たくさんの刺激があるが、
趣味が無い人は、内にこもるり、刺激が少なくなってしまう。
介護を利用している人は市内に400人ほどいるが、4分の1の人は体も動かさず、刺激も少ないため、介護度が重くなってしまっている。刺激を受けることや体を動かす事は、ボケ予防に役立つ。
女性が長生きする秘訣は、若いころから死ぬまで掃除・洗濯・炊事等が適度なリハビリとして機能しており、血液がめぐるように動いているからである。洗濯や調理をする女性は、「明日は晴れるかな?」「明日のご飯は何を作ろう…」等、いつも明日を考えている。明日を考えている人は死ねない。それにくらべると、男性は明日を考るより、昔話をしてしまう。
是非、皆さんも「明日へと生きる」生き方をして下さい。
「介護保険の問題」
8年前に介護保険が始まった時は、60人の入所枠に対して老人ホームに殺到して待機者が600人に上っていた。当初は、申し込み順の受付となっていたが、現在は介護度の高い順に変更になった。その為、入所者・待機者は介護度が重い人ばかりになった。
部屋代や食事代も全額負担になっており、費用がかかる。いかに健康に長生きする必要があるかが大きな課題である。
「日本の福祉が危ない」
・ 北欧諸国は消費税が25%だが、死ぬまで福祉が充実している。
@ 福祉は高齢者や障害者だけのものではなく、子供のものである。
日本は、少子高齢社会になっており、年間109万人誕生者に比べ、亡くなる人は114万人おり、年間5万人の人が減っている。
生まれてくる子供の量は少なく、高齢者が増えている為お金を払う人がいない。
A 人の物を自分のものと言い張る、名前を忘れる、徘徊老人等が増えている。
お年寄りの脳はだんだん忘れっぽくなっており、幼児期の体験が不足した脳にしっかり刻まれたことは忘れない。徘徊老人の多くは生まれ故郷に行こうとする。徘徊老人の内、
年間、36万人が行方不明等で亡くなっている。
B 孤独で寂しい思いをした人や認められた体験が不足している人が認めて欲しいと
注目を集めるように殺人を犯す者が増えている。
慈愛園では、「コウノトリのゆりかご」があり、お母さんがいない乳児15人、児童90人を預かっているが、親御さんがいる子どもの方が問題を抱えているケースが多い。
現在の日本の子どもに落ち着きがなく、すぐにカッとなりイライラするアメリカの非行少年少女のようになってきた子どもが増えいる。
幼児期に認められなかった経験や母親からの抱っこ、おっぱい、添い寝、おんぶが足りなかったことが大きな原因である。
アメリカ人やヨーロッパの育児はおんぶをしたり、おっぱいを与えることよりも、キスをたくさんして愛情を伝えた。それが、非行に大きく関わっている事が判明したため、現在、アメリカ人の70%はおっぱいやおんぶを取り入れている。逆に、日本人はアメリカの育児を真似して、おっぱいやおんぶを取り入れているのは僅か50%程である。
キスをたくさんして愛情を伝えるヨーロッパやアメリカの育児よりも日本人の抱っこ、おっぱい、添い寝、おんぶの方がしっかりと愛情が伝わった。
昔の日本人は、素晴らしい哺乳類の育て方をしていた大変素晴らしい民族だった。母乳
を与えているときに出るホルモンは優しいホルモンであり、母からの愛情がしっかりと
伝わっていた。
昭和40年頃アメリカを真似して母子手帳に「〜添い寝はいけません1人で寝かせましょう〜抱き癖がつくから、おんぶ、抱っこはほどほどに」という記述がされ、育児が変わった。
抱っこされない、おんぶされない年代の子どもたちが思春期の昭和55年頃、校内暴力
が起こり、更に、大学や社会人になる頃には、“プッツン”や“新人類”と呼ばれる様
になっていた。その年代が親になってその子どもにもそういう傾向が見られる。
年間、72万組が結婚し、27万組が離婚している。